木のいのちを生かす技

奈良市

世界最古の木造建築

斑鳩の地に、日本で仏教を政治に取り入れ広めた聖徳太子が、607年(推古15年)に亡き父・用明天皇のために創建したのが法隆寺である。「日本書紀」のよると670年(天智9年)に消失したとされ、その後奈良時代初頭には再建された。 法隆寺伽藍は「法隆寺式伽藍配置」と呼ばれ、金堂を中心とした西院伽藍と夢殿を中心とする東伽藍に分かれているが、西院伽藍の五重塔は、金堂と共に世界最古の木造建造物である。

外観

外観

五重塔

五重塔は、檜(ひのき)を積み上げて建てられており、その高さ32m。屋根は初層から上層にいくほどに小さくなり、相輪を抱く五層目の軸部は初層の約半分の大きさで、どっしりとした安定感を感じる。層ごとに独立して造る積み上げ構造と、心柱(中心の柱)が各層の梁や柱に固定されておらず吊り下げられているのが特徴で、地震の時には建物本体と異なる周期で揺れ動くことで振動を抑える免震構造となっている。心柱の下にある心礎には仏舎利が納められており、心柱の四方には塔本塑像と呼ばれる釈迦に関する四つの説話が小群像で表されている。

五重塔

 五重塔

宮大工の仕事

    

建造より1300年を経て今もなお、腐らず、崩れず、すっくと佇立している五重塔。その秘密は1300年前の宮大工の技法を、今に伝えてきた法隆寺付の宮大工の、口伝(くでん)と呼ばれる棟梁から棟梁へと口移しで伝えられてきた木に対する知恵にあるという。今はなくなってしまった法隆寺つきの宮大工の最後の棟梁の西岡常一さんは口伝を公開し、「木の教え」塩野米松著という本にまとまり、現代の私たちも宮大工に綿々と伝わってきた秘伝を知ることができる。効率が最優先される現代では考えられない木の特性を活かしたものづくりの知恵には、深い感銘を受ける。

軒

 

金堂

    

金堂は西院伽藍最古の建築で、軒の出がうんと深く1300年を経ても変わらない安定した姿は美しい。法隆寺によると『入母屋造り二重の瓦屋根と下層の裳階(もこし)の板葺きの対比、これに奥深い軒下の垂木(たるき)や雲斗・雲肘木が調和して快いリズムを奏でて』おり、内部には聖徳太子の冥福を祈り造られたとされる「釈迦三尊像」が安置され太子の心を今に伝えている。

金堂

 金堂