線材が織りなす美

北佐久郡軽井沢町 

軽井沢の空と大地に

自然豊かな軽井沢に別荘を構えてきた黒栁徹子さんが、長年にわたり収集してきた美術品、アンティーク、着物などのコレクションを、多くの方に見ていただき後世に残してゆきたいとの思いから、長野県軽井沢町に黒栁徹子ミュージアムの開館が実現した。

外観

 外観

線材が織りなす美

建築家・内藤廣氏による、黒栁徹子ミュージアムの建築は、柱と梁といった「線材」で構成する骨組み(軸組)で支える構造で、舞うように折り重なる複雑でユニークな屋根を持つ木造2階建て(一部鉄骨造)。屋上に物干し台をイメージした物見台が設置され、浅間山を望むことができる。建物は軽井沢の空と大地にしっくり溶け込み、心地よい空間を創り出してる。

エントランス

エントランス

大工さんの在来工法

   

建築家・内藤廣氏が建物を造る際に『まず初めに考えたのは、大工さんが作るような在来工法の木造技術で造る』こと。江戸時代初期に作られ、やがて広く庶民の暮らしを支えるようになった大工の工法は、家を建てる際の棟上げ式に見られる『真っ青な空を背景に組み上げられた木材の骨組みは、ため息が出るほど美しいもの』と表現している。大工の工法は、『庶民の技術であり庶民の暮らしに息づいていた文化』と語る内藤廣氏。舞うように折り重なる屋根には、物干し台がモチーフの物見台が設置され、お天気の良い時には浅間山が見渡せる。

外観

 外観

柱や梁の林

   

ミュージアム内部には、自然の光と風を取り入れるため中庭が設けられており、長野県産のカラマツをふんだんに使った温かみのある内装が特徴。板張りの床は浮づくり仕上げで、昔の小学校を思わせるような懐かしい雰囲気を演出している。物見台に上っていく階段には、この建物の複雑な柱や梁の間を潜っていくような面白さが感じられる。テレビと共に20世紀に登場し、21世紀の今も軽やかに駆けている黒栁徹子さんのイメージが、ミュージアムの建物と重なって見えてくるから面白い。

建物内部

 建物内部

建物内部

 建物内部